wanshannan’s diary

ドラマ、映画、ゲームの感想を中心にその他のことも書きます。

3/15 映画「Fukushima50」を見てきました

【3/15】

映画「Fukushima50」を見てきました。よかったです。
作中の津波地震、降ってくるがれき、家族が生きているかどうかという不安、今見ている物は作り物ものだけど、現実にあった怖さや恐ろしさかもしれないんだと思うと、色んなシーンが怖くて泣いてたんで、相当感情揺らされました。

わたしは、人間とか感情のあるもの以外に感情移入をした記憶がないんだけど、冒頭の非常用電源タービンには、いろいろ込み上げました。福島第1原発は電気がなくなってしまったから水素爆発や放射能が漏れてしまった、という事実を知っていたので、津波が来ても、お前が生きてくれてさえいれば何とでもなったのに、という気持ちはずっと持っていたんです。作中で本震、停電直後にちゃんと起動して発電した場面は「あぁ。この子はちゃんと仕事してるのに津波が来て仕事ができなくなっちゃう。なんて可愛そうなんだ。」と、健気にタービンを回す振動音に、まるで子供や動物を愛おしむような気持ちになった。水かぶっちゃった場面なんて、かわいそうすぎて泣いた。頭を抱えた。ここまで冒頭10分です。作中の登場時間はものの10秒くらいでしたが、この映画で最も愛おしい存在が非常用電源タービンでした。かわいそう。

まぁ、タービンうんぬんは個人の感情が大きく入っているのでここまでにしておいて、全体を振り返ります。前半は映画「シン・ゴジラ」のような展開。有事が起き、対策に当たる人たちは不安の中、訓練を思い出しながら事に当たり、想定外の事が起きればメーターの確認、飛び交う専門用語、焦りからくる早口、沢山の人が出てきて、場面も頻繁に変わる。というか地震津波の描写がまじゴジラだったわ。海底割れてさ。津波、来ないでーと祈った。来たんだけどさ。
後半は人間ドラマ。沢山出てきた人たちの人間関係をまとめ上げていました。


前半は本当に混乱のるつぼで、つか福島第1は現在進行形で道半ばで、どうやってこの映画を締めるのかわからなかったんだけど、人間ドラマのおかげで締めることができました。具体的にいうと佐藤さんが自分の家族と再会するのがホント心からホッとして、あぁこれで何とか終われたわ、と思いました。映画してた。


職員役の人たちの一部がなまっていたのが良かったです。福島第1の職員は地元の人が沢山いるというのは聞いていたので、それが実感できました。大森さんの安定感が素晴らしかった。火野正平さん、すげーわ。出番少ない人含め、半端な演技してる人がいなくて気持ちよかったです。段田安則さんと篠井英介さん、佐野史郎さんは、こういう役ばかりな気がしてきた。ハマってるんだけどさ、ばっちり。年が一回り以上離れてても、斎藤工なら、よくね?


セットも大きくて、手が込んでて、金がかかってる映画ってやっぱ気持ちいいわ。防護服の上から名前を書いたガムテープを貼ったり、マスクと顔にはテープで目張りした、目的の栓の番号を手袋の甲に書く、消防車のホースをパッと投げて伸ばす動作、注水するには電源が必要、注水用のバルブも開けないといけない、車のバッテリーでメーターだけでも動かす、野戦病院のように床で転がる職員、東電外企業の人への呼びかけ(東芝とか三菱とかかな)、匂いが強烈なトイレ、高圧電力と低圧電力、電源車と消防車を呼ぼうにも流されたり道ががれきまみれ、明るい緊急対策室とほぼ真っ暗な中央制御室と原子炉建屋の対比がとても効果的で緊張したり緩んだりする、時間が経過するとひげが生えたりくたびれてくる、暑いのかな、寒いのかな、東電マークの防寒具は脱がないとダメか、はたして本当に避難所で歓迎してくれた人たちはいたんだろうか、色んな情報が入ってきてよかった。


2時間しかないのに、沢山の要素を無理なく少ない説明でわかりやすく書けていたのが良かったです。ベントって単語は知ってたけど、具体的にどういうことかわかっていなかったわ。建屋に入ってバルブを開けないといけなかった。なるほど。
私は人が受けていい線量だとか、東海村だとか、事前知識が多少あったので、わりとスムーズに入ってきた自覚がある。でも、この映画は原発に関する前知識がなくてもスッと入るようにできていると感じました。首相が専門家に質問したり、「緊急時に浴びる線量ギリギリじゃねぇか」などの台詞も助けになる。ただし、スピードが速いので相当集中する必要はあると思う。
立て続けに原子炉建屋外壁が吹っ飛ぶんだけど、吹っ飛べば屋外で作業している人たちにがれきが直撃するという、当然のことも書いてくれてよかった。盲点だった。そりゃ、そうなるわ。


専門的なことをわかりやすく書いている、と褒めましたが、実はわかりにくい点もあって、何号基の話をしているのかわからなくなる時がしばしばあった。事前にウィキペディや東電のホームページを見ておいて、何回か見ないと「あ、コレは2号基のことだわ」とわからないと思う。までも、映画を見る上でここまで理解する必要はないか。

 

素人ながらウィキペディアや東電のホームページを見て、事故の経過はどうだったのか調べていましたが、正直、何が書かれているのか理解するには到底及ばない。こういうの書く人が玄人で専門家だから、素人にわからないようになってんじゃないかな。こういうページを作る人は、専門家から講義指導を受けた素人に書いて欲しいです。そっちの方がわかりやすい気がする。夏休みの研究みたいな。

www.tepco.co.jp


余談ですが、この映画に関する口コミや感想がもう、とんでもなくて頭がクラクラします。どうとらえともいいんだけど、さ・・・・・・。プロパガンダの意味を間違えて覚えてたっけ、て思ったよ。「見に行ってないけど、事故のことうやむやにしてるんでしょ」という言い切りができる堂々とした感じも訳わかんないし、「やっぱりそういう内容なんですね!絶対見に行きません!」とかもよくわからん、思考の流れがわからん、なんでそんな素直に人の言うこと真に受けられるの。史実と違う、というのはいいけど、どこが違ってどういう効果をもたらしているのかまで説明している文言は見つけられない。この映画はやばい、というのはいいけど、何がどうヤバくてどういう影響をもたらす恐れがあるのかは見つけられない。こんな映画は最低の作品だ、あ、日本の映画自体が最低だったわ、とかよくわからないことまでくっついてくるし、ほんと混沌としている。何がどうなってこうなるのかがサッパリわからない。ともかく3.11を取り扱うとこうなるよ、というのを見せられました。コロナニュースよりよっぽど気持ちがすさむよ。

 

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発 (角川文庫)